2017/06/11
宅建業法改正により、来年の4月から中古住宅の売買時に住宅診断の斡旋が義務化になります。
それに伴い、住宅診断をする検査員の資格は「既存住宅状況調査技術者」の講習を受けた建築士に限定されました。
ここ迄は、何の問題も無いと思います。
問題は、「既存住宅状況調査」の調査報告書の内容です。
【3】床(構造)の調査項目(3)6/1000以上の傾斜
(凹凸の少ない仕上げによる床の表面における2点(3m程度離れているものに限る)の間を結ぶ直線の水平面に対する角度をいう。)です。
これの何が問題か?
◆問題点をハッキリとさせる為の前提として
(3m程度離れているものに限る) ⇒ 「程度」と「限る」
「程度」とは3m前後(2m80cm~3m20cm)なのか? 例えば910モジュールの6帖(幅3.640×奥行2.730)の洋室を想定した「程度」なのかハッキリ分からないが、その様に解釈したとします。
「限る」とは、例えば上記の6帖を想定した場合、幅・奥行・対角の距離を考えたと解釈します。
つまり、6帖の洋室を想定した場合、測定点は4隅の4箇所が想定されます。
さて、前置きが長くなりましたが今回のタイトルに入ります。
◆大きな問題点1として
この調査報告書の劣化事象等の項目に足りない項目が有ります。
「不同沈下の可能性」の有無です。
「不同沈下」は劣化と考えないのでしょうか?
この調査報告書の内容では、家全体が不同沈下していても、部分的に不同沈下していても、床の傾斜が6/1000未満で有れば問題無しと判定されます。
◆大きな問題点2として
傾斜測定点間距離に「3m程度離れているものに限る」です。
この「3m程度離れているものに限る」で測定した結果が6/1000未満で有れば問題無しと判定するのでしょうか?
◆問題点の説明として
この二つが、何故大きな問題点なのかを引き続き説明していきます。
傾斜測定点間距離に「3m程度離れているものに限る」という項目では、「不同沈下の可能性」の有無を発見する事は不可能に近いです。
(特に今後、住宅診断をした経験が無い建築士がこの講習を受講して、調査報告書に沿って調査をして行きます。)
では何故不可能に近いと言えるのか。
何故ならば、4隅の測定点4箇所だけで有れば、その部屋の床傾斜の詳細を把握する事は出来ません。つまり、とても大雑把なのです。
参考として、下記の測定図(5月25日のブログに記載した実例測定図)を見て下さい。部屋全体の下半分から床の傾斜が大きくなっている事が分かります。測定距離3m程度、つまり4隅の測定点だけでは「不同沈下の可能性」の有無に「?」は生じないのです。
私が実際に実施している住宅診断では、床の傾斜測定(測定点5箇所~9箇所)で「?」が分かり、外部基礎のひび割れ調査を確認して「?」が増幅し、最後に床下から基礎のひび割れ調査をして納得し、建物の廻りの環境を診て「不同沈下の可能性」の有無を判定します。
◆このタイトルの纏めとして
劣化事象には「不同沈下の可能性」の有無の項目が必要であり、「不同沈下の可能性」の有無には、「3m程度離れているものに限る」では発見出来る可能性が非常に低いという事です。
つまり、来年4月からの中古住宅売買時の重要事項説明書に用いられる「建物状況調査の結果の概要」には、不安材料が有るという事です。
売主様からの住宅診断報告書を信用するのではなく、買主様自らが、セカンドオピニオンとして経験豊富な住宅診断士を探し、住宅診断をされる事をお勧めします。
ご質問等がございましたら、画面の上下に有る「メールでのお問合せ」でお願いします。
では、今回はここ迄とします。
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