2018/04/22
今回は、「建物状況調査」の実態についてお話をして行きます。
この図面は、実際に「住宅診断」をした建物で、
総合判定に於いて、
建物の近くの法面側に不同沈下をしていると報告書に書いて、依頼者に説明した物件です。
これを「建物状況調査」の報告書に当てはめた場合は、
基礎の劣化事象の欄の「有り」にチェックが付けられるだけで報告が終わります。
この一つのチェックを、買主様は判断して購入する事になるのです。
詳しい内容として
「建物状況調査」は、床下に入っての調査をしませんので、
この建物の劣化事象として報告書に記載する内容は、
基礎の0.50mmと0.55mmのひび割れだけが、劣化事象となり、
基礎の劣化事象欄の所の「有り」にチェックが入るだけになります。
あれ?
「住宅診断」では不同沈下が有ると報告しているのに、
不同沈下はどうなるのか?
「建物状況調査」には、不同沈下の有無の項目は有りません。
また、
床の傾斜の計測箇所、計測方法の検査基準が統一されていないので、
床の計測場所が、部屋の各辺と対角の6箇所の計測でも良い為、
6/1000以上の傾斜は無しとする建築士が多く出てくると考えられます。
私達の実績と経験で築き上げた「住宅診断」の計測方法、判定方法は必要無いのです。
無いと言うよりも、
半日の講習で資格が与えられる「既存住宅状況調査技術者」の建築士に
「住宅診断」をしなさいと言っても出来ないのが実情。
故に、
「住宅診断」では不同沈下が有ると依頼者にお伝えできるのですが、
「建物状況調査」では、ただ単に基礎部分の劣化事象欄に「有り」のチェックが入るだけになります。
つまり、不同沈下が有る建物を知らずに買主様は、その中古住宅を購入してしまうのです。
「建物状況調査」は、買主サイドの判断を狂わす最悪のシステムになります。
不同沈下が有るとした判断とは
因みに、不同沈下が有ると判断した工程として、
最初に外部の基礎のひび割れだけでは不同沈下の判断材料にはなりませんが、
建物廻りの敷地の状況を把握します。
そして、床と壁の傾斜を計測した時点で、
建物全体が南側(法面側)に傾斜している事が判断できます。
しかし、まだこの時点では不同沈下と判定はしません。
今度は、床下に入っての調査で、法面に並行して基礎のひび割れ0.85mm、0.95mmが確認出来た時点で、
初めて不同沈下かどうかの判断できる事になるのです。
つまり、大きな判断材料は、
①建物に近くに法面の存在
②その法面に並行して床下に入っての調査で0.90mm前後の貫通クラックの存在
③部屋中央の横線(貫通クラックのライン)から南側(法面側)に6/1000以上の勾配の存在
④壁の傾斜が法面側に5/1000傾斜している存在
この4項目を判断材料として、不同沈下が有ると判定したのです。
今回は、これで終わります。